もくじ
はじめに
2020年4月現在、金融緩和バブルの真っ只中です。このバブルについて、触れていきます。
- バブルと呼ぶ根拠
- バブルの発生と成長
- バブルの崩壊
- まとめ
バブルと呼ぶ根拠
以前の記事で紹介した、バフェット指標を見てみます。

2013年頃からバフェット指標が急激に上がり、2017年頃から120前後で推移していることが見て取れます。この120という数字は、1990年頃の日本経済バブルと同じ水準です。つまりこれは、2017年頃から日本経済バブルと同じレベルで、株式指数と名目GDPの成長が乖離していることを示しています。
また日経平均PBRを見ても、2013年頃から1.5~2.0の間を行き来しています。

これらバフェット指標と日経平均PBRより、2013年頃から株価指数が実体経済に比べて割高になっているということが言えます。
バブルの発生と成長
次に、この割高を支えている期待が何かを考えます。考えられる中で、一番影響が大きいと想定されるものがアベノミクス(金融緩和*1)です。
実際、日銀のバランスシート推移を見てみると、下記の通り2013年から急増している様子が見て取れます。
https://jp.tradingeconomics.com/japan/central-bank-balance-sheet

流動性の罠などお構いなしに、市場が金融緩和に期待していることは充分に考えられます。そして実際、新型コロナの対応も含め、日銀はせっせとバランスシートを拡大してきました。
そして今、新型コロナの影響で株式指数は地に落ちて然るべきなのに、下げ渋っています。株式指数が実体経済よりかけ離れて高い状態であり、バブルと呼べます。
日銀バランスシートの拡大と株式指数の上昇の因果関係を厳密に証明することは難しいですが、間違いなく相関関係は見られます。少なくとも、日銀は市場の期待に応え続けることで、バブルの発生と成長を一手に支えてきたということは言えそうです。
バブルの崩壊
これがバブルというのであれば、その定義上、必ず崩壊します。ここでは、何のきっかけでバブルが崩壊するのかを検討します。
まず、なぜ日銀の急激なバランスシート拡大が可能だったのかを考えます。疑問は、下記の3つです。
- 日銀がバランスシートを拡大させて日本円が市場に溢れたのなら、日本円の価値が大きく下がった(=円安になった)のでは?
- 同様に、日本円が市場に溢れたのなら、インフレになったのでは?
- 日本が国債を連発する国なのに、いまだに日本円が安全資産なのはなぜ?
貯蓄好きな日本人
円安にならなかった理由はシンプルで、同時期に①諸外国も負けじと金融緩和を進め、②そのお金が各国の経済で良く回っていたからです。
日本は2013年から現在にかけて、日銀のバランスシートが3倍程度になりました。同期間に、アメリカは1.3倍程度、中国は1.2倍程度、EUは2倍程度と金融緩和を進めていました。
また、銀行はある顧客からの預金が100万円あるとき、例えば50万円を企業に貸し出す商売をしています。これにより銀行は、預金通帳上での100万円の預金を抱えたまま、50万円の現ナマを企業へ渡します。この100万円が150万円に(インチキっぽく)増える事態が、経済が回るということです。この経済の周り具合も考慮した上で市場に出回っている貨幣量を表すものとして、マネタリーサプライがあります。
日本は、2013年頃から現在にかけて1.3倍程度になっています。
https://jp.tradingeconomics.com/japan/money-supply-m2

アメリカは、2013年頃から現在にかけて1.6倍程度になっています。
https://jp.tradingeconomics.com/united-states/money-supply-m2

中国は、2013年頃から現在にかけて2.2倍程度になっています。
https://jp.tradingeconomics.com/china/money-supply-m2

EUは、2013年頃から現在にかけて1.4倍程度になっています。
https://jp.tradingeconomics.com/euro-area/money-supply-m2

日本は日銀がせっせとお金をバラまいたにも関わらず、そのお金はただ貯蓄されるだけで、経済を回しませんでした(流動性の罠もあるでしょうが)。その結果、他国に比べてマネタリーサプライが特別増えたわけでもなく、円安になりませんでした。
同様に、微増しただけの日本のマネタリーサプライは、インフレ効果も乏しかったと言えます。その裏返しとして財政赤字に対してレバレッジをかけない日本の姿勢が評価され、日本円は安全資産の地位を確保できているというわけです。
ところで、フィッシャーの交換方程式というものによると、大雑把に「マネーサプライ×経済の回転≒インフレ具合×実質GDP」です。
「日本の場合はマネーサプライが大きく変わっていないので、インフレ具合も実質GDPも大きく変化していない」「諸外国はマネーサプライが微増しており、インフレ具合・実質GDPもそれぞれ微増している」ということが言えそうです。
バブル崩壊のトリガー
日銀は引き続き、株式指数(=バブル)を買い支えるでしょう。しかも、その財源はほぼ無尽蔵というインチキです。よって、①市場がインチキを見限って一斉に売りに走るか、②買い支えを押し潰す程のネガティブイベントが起きるか、③日銀が買い支えを諦めるかが、株式指数の落ちる条件です。起こるとすれば、②→①→③の順番が自然だと考えられるます。
あるいは日本人が貯蓄を止めて、日銀がバラまいたお金で経済を回しだすということもありえます。これをしてしまうと、一気に日本のマネタリーサプライが膨らみ、国債の下落・円安を引き起こす可能性があります。新型コロナの影響で、日本企業が貯めていたお金を吐き出すのであれば、この可能性も考慮事項に入ります。M3が月次3.5%以上の伸びを見せると、少し怪しくなってきます。
最後に、もしかすると世界が足並みを揃えてお金をバラ撒いた影響で、世界的なインフレが起きるかもしれません。この場合は、その前に好景気が来るのでしょうが。
まとめ
日本も諸外国も、足並みを揃えてお金をバラ撒きました。諸外国ではインフレ/実質GDPにある程度の影響を与えたものの、日本ではその貯蓄指向によって、インフレ/実質GDPに与えた影響は軽微でした。
一方、実体とは別に「お金が世界中でバラ撒かれている」という事実に期待を持った市場は、株式指数を必要以上に押し上げています。また、日銀が直接的に株式指数を買い支えている側面もあります。
日本が実体経済の成長もなくお金をバラ撒けているのは、日本の貯蓄指向のおかげです。市場が無意識に「日本ではお金がバラ撒かれても、貯めるだけで外には出てこない」ということを確信しているからこそ、バラ撒きが許されているわけです。
日銀が実体経済を動かせないことは周知の事実として、「日銀が目先の株式指数すらコントロールできない」あるいは「日本でもお金を貯め込まず回すようになった」と市場が認識したときが、バブルの弾け時です。
例を挙げます。例えば、新型コロナ関連や地震関連で、日銀が買い支えれない規模のネガティブがイベントがもう一度起きると、バブルは崩壊します。日銀の損益ライン(最終防衛線)が破れると、マズいことになります。あるいは、にわかに日本のマネーサプライが増えだしても、国債が下落し、つられて株式指数も下落します。
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※1:下線の部分は、仮定です。ここの仮定が崩れると、今回の議論の一部/全体が崩れます。
※2:太字の部分は、単に強調です。私が重要だと考えている部分です。
※3:投資は自己責任です。